2013年10月27日
日本心不全学会チーム医療推進委員会主催 教育セミナー大阪会場を受講してきました。
午後に用事がかぶっていたので、午前だけの出席となりましたが、とても有意義なものでした。
①急性心不全の診断と治療のポイント
②心不全入院患者の観察ポイント
③心不全における心臓リハビリテーション
①の診断のポイントにおいては、急性心不全の臨床病型としてうっ血所見・ 起座呼吸・頸静脈圧の上昇・浮腫・腹水・肝頸静脈逆流・低灌流所見・小さい脈圧・四肢冷感・傾眠傾向・低Na血症・うっ血の所見の有無・腎機能悪化の身体所見を診るというノリア・スティーベンソン分類が
現在優れた病態把握として臨床に多く用いられていることを言われていました。
この診察所見は、採血が必要な血液検査以外は東洋医学的にもほとんど合致しています。ただ、脈の診方は異なります。
しかし質疑応答の中で、講義をされた国立循環器病院の部長医師は、熟練した医師が交互脈という急性期特有の脈状を後輩医師に伝えるのに、その場に居合わせて所見と脈を診て、後輩医師に実際に脈を取らせて教え、臨床に使える有効な手段を伝承していくと言われました。
その医師はこういうことが出来なければ医師として充分でないと言われていたのには、その通りだと感銘と受けました。
治療におきましては、心肺蘇生の方法は従来の方法である一次的(ADEや人工呼吸など病院外での処置)および2次的(病院内で行われる救命処置)救命処置について短く説明され、メインは呼吸困難などによる肺の鬱血を防止するため鼻マスクやフェイスマスクを使用しての換気様式(NPPV)で従来の気管挿管しての食道挿管に比べて低酸素血症や血圧上昇が減り、食事も出来るなどの理由でNPPVの方が利点があるということです。
その他、実際の症例なども数多くあり、どういう薬を使って治療するのかが良く分かり、また、血圧や肺所見などが一見良好に見える状態でも、脈の状態と手足の冷汗がきついという所見で心機能の著しく悪い状態を紹介した症例もあり、我々東洋医学的な所見ととても合致していて興味深かったです。
②では、看護師さんの立場からの講義でした。とても興味深いのは、看護師さんの立場で心不全の症状を東洋医学的に合致する認識で捉えられていたことです。心不全の症状は、非常に多岐に渡るもので、疲れやすい、全身倦怠感、血圧が変動する、夜間多尿、頚部静脈の怒張、息切れ、呼吸困難、咳嗽、喀痰、食欲不振、チアノーゼ、冷汗、体重増加、浮腫、バチ状指、悪心、嘔吐、動悸、便秘、肝腫大、黄疸、精神神経症状などなど 全身的な症状として現れるということです。
その症状一つ一つについて細かな注意点があり、毎日細かくチェックできる看護師さんならではの視点だなあと感心いたしました。
特に興味深かったのは、脈の種類を交互脈、大脈、小脈、遅脈、奇脈というようにさまざまに分類されていたところです。その臨床的位置づけは東洋医学とは異なりますが、看護師さんにも東洋医学を理解していただく接点があるのだなと感じました。
③の心臓リハビリテーションのセミナーでは、心不全という状態を一般常識を覆すような説明をされていました。一般のドクターにもこの点は誤解をしている方が多いようです。
慢性心不全の方は、心臓自体が悪いのではなく、それ以外の原因があるために心臓に影響が来て悪くなっているのであると言われていました。普段、私が説明している内容と全く同じことを言われていました。急性の心不全だけが心臓の機能が著しく低下し、ショック状態なわけで緊急に処置をしてショック状態を回避しないといけません。
しかし、それが落ち着けばむしろ、身体を動かし適度な運動をして全身の骨格筋を鍛えて血液の流れる量を増やした方が良いのです。
その方が心臓自体の負担を軽くし、心臓のポンプ機能が高まり、交感神経系も休まり、BNP(心不全の臨床的有用指標 標準は20pg/ml以下)も安定してくるそうです。
心臓リハビリという言葉は、聞き慣れない言葉かもしれませんが、従来の利尿剤に始まり、カテコラミンなどの強心薬の時代を過ぎ、血管拡張薬(カルシウム拮抗薬・硝酸薬)、交感神経遮断薬(βブロッカー・ACEブロッカー)などの治療の歴史を経て、最新の現代医学なのです。
しかし、入院している期間中だけではだめで、退院した後のケアをすることが非常に大事となってくると思います。
その中心は、看護師さんや栄養士さんとなりますが、私の理想を言えば、患者さんの身体に負担のかかる薬物療法を避けるために、鍼灸治療をその基本に据えて、検査や状況の確認のためにドクターに診てもらうことが大事だと思います。
なぜなら、機能回復のスピードは、利尿剤・強心剤・血管拡張薬・交感神経遮断薬などを駆使することよりも数10倍も速いからです。長年そういう薬を使われてきて治らなかった方が回復されている例はたくさんあります。
これからも、こういう学会へ積極的に参加し、心臓疾患に悩む患者さんの役に立てるように
協力していただける医師やパラメディカルの方とも縁が出来ればいいと感じました。
以上長々と報告いたしました。
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