十一月の養生法 心臓の症状 アトピー性皮膚炎について
今月は、アトピー性皮膚炎について書きます。
タイトルには心臓の症状とありますが、なぜアトピー性皮膚炎と心臓疾患が関係あるのか?
全く関係がないように見えますが、実はアトピー性皮膚炎の合併症として心臓疾患は非常に多く、さらにステロイド剤を使っている方は、免疫機能が低下しているために、重症化しやすいのです。実際の症例で解説いたします。
感染性心内膜炎、アトピー性皮膚炎 男性 26歳 独身
生後2カ月の時に頭に湿疹ができ、頭皮がぐちゃぐちゃになって髪の毛が全て抜け落ちてしまう。その後、自然に回復。
生後半年ごろから頬や顎の周りがじゅくじゅくしてきて、中3年生くらいまでステロイド軟膏による治療をする。しかし、副作用で顔が真っ赤に腫れあがり入院。何とか高校進学するも、休学。
ステロイドの副作用に関する番組を見て、ステロイドによる治療を一切放棄したため、全身で症状が悪化し、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に感染。全身の皮膚がぐちゃぐちゃになる。
自宅で温泉療法を開始するが一年で良くならず高校を中退。温泉療法で少し症状改善するが、3年目の夏に検査で潰瘍性大腸炎が発覚。
病院からはステロイドによる治療を強く勧められるも断り、漢方薬と温泉療法のみによる治療を続ける。アトピーはましになってきたが、大腸炎が悪化。その後薬物療法を選択。
しかし大腸炎は全く良くならず、アトピーも薬物療法後リバウンドで悪化、再びMRSAにも感染する。症状が安定してきてからは、自宅で温泉療法を再開するが、大腸炎が悪化。
さらに片方の目に白内障が発症し、視力がほとんど失われてしまう。目の手術と炎症を抑えるためのステロイド点眼薬で目の症状は良くなるものの、ステロイド点眼薬を辞めた途端全ての症状が悪化。そして、高熱と下痢で自力で立てないほどになり、救急車で病院に運ばれる。
様々な検査の結果、心臓の僧帽弁に黄色ブドウ球菌が付着していることが判明し、感染性心内膜炎と診断される。手術を勧められるものの、アトピーとMRSAがひどく手術ができない状態。僧帽弁に付着している黄色ブドウ球菌が、いつ血液とともに他の臓器に転移しないかが心配。
ステロイド剤は、決して悪い薬ではありません。人体が危急の際に一時的に命を救うために、身体に分泌されるホルモンです。元々人体で作られるものなのです。急激な炎症が起こった際に、いち早く治そうとしてがんばるものです。なので、身体が危急の状態でない時に、それを使おうとすると免疫能力を損なうほど効いてしまいます。
この方の場合、鍼灸治療以外で皮膚の異常に対してもっとも効果的であったのは、家族以外と話をすることや体を動かして発散するなど、ふだんしない自己表現をすることであったように感じます。
※MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)とは・・・
抗生物質メチシリンに対する薬剤耐性を獲得した黄色ブドウ球菌、実際は多くの抗生物質に耐性を示す多剤耐性菌である。
薬剤耐性菌であるため薬剤の使用が多い病院で見られることが多く、入院中の患者に発症する院内感染の原因菌としてとらえられている。しかし病原性は黄色ブドウ球菌と同等で、健康な人にも皮膚・軟部組織感染症などを起こしうる。
免疫力が低下した患者に感染すると、通常では考えられないような感染症に至ることもあり、一旦発症するとほとんどの抗生物質が効かないため治療は困難である。
特に、術後の創部感染、骨感染(骨髄炎・関節炎)、感染性心内膜炎(IE)、臓器膿瘍は難治性化し、適切な治療を受けられないと死に至ることもある。
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