MRSAによる感染性心内膜炎
この患者さんはいくつもの症状を重ねている非常に重症で経過も長期間に及ぶ方です。来院されたりされなかったり、精神的にも病気を併発されてしまっているので顕著な治験例ではないですが、じっくりと時間がかかるものだということを踏まえていただき、お読みくださればと思います。
こういう症状の方も、時間をかけて向き合えば経過は必ず良くなるものと思っていただければ幸いです。御家族の方の参考になればもっと幸いです。
主訴 | 感染性心内膜炎、アトピー性皮膚炎 |
初診日 | 平成X年12月20日 |
患者情報 |
男性 26歳 独身 173cm 60kg 無職 |
現病歴 |
生後2カ月の時に頭に湿疹ができ、頭皮がぐちゃぐちゃになって髪の毛が全て抜け落ちてしまう。その後、自然に回復。
生後半年ごろから頬や顎の周りがじゅくじゅくしてきて、以降中学校3年生くらいまでステロイド軟膏による治療をする。 しかし、副作用で顔が真っ赤に腫れあがり入院。 何とか高校進学するも、休学。
TVでステロイドの副作用に関する番組を見て、ステロイドによる治療を一切放棄したため、全身で症状が悪化し、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に感染。 全身の皮膚がぐちゃぐちゃになる。 病院では「命の補償はできない」と言われるものの、塗り薬で一時的に綺麗になってくる。 その後は、弱いステロイドを塗りながら症状を誤魔化しつつ、復学に向けて勉強をするも、症状が悪化。
ある時書店で温泉療法を知り、ステロイドによる治療を中止し、自宅で温泉療法を開始する。 1年ほど続けても症状は良くならず、より治療に専念するため、高校を中退。 その後も温泉療法を継続することで少しずつ症状が良くなっていく。
温泉療法3年目の夏に検査で潰瘍性大腸炎が発覚。 病院からのステロイド治療を断り白血球除去療法を受けるものの、良くはならず少しずつ悪化していく。 病院からはステロイドによる治療を強く勧められるも断り、漢方薬と温泉療法のみによる治療を続ける。 アトピーはましになってきたが、大腸炎が悪化。 病院からは手術を勧められるも薬物療法を選択。 結果、大腸炎は全く良くならず、アトピーも薬物療法後リバウンドで悪化、再びMRSAにも感染する。
その後、薬物治療で症状が安定してきてからは、自宅で温泉療法を再開するが、大腸炎が悪化。 さらに片方の目に白内障が発症し、視力がほとんど失われてしまう。 目の手術と炎症を抑えるためのステロイド点眼薬で目の症状は良くなるものの、ステロイド点眼薬を辞めた途端全ての症状が悪化。
一時ホメオパシーによる治療も行うが、全く効果はなかった。
そして、高熱と下痢で自力で立てないほどになり、救急車で病院に運ばれる。 様々な検査の結果、心臓の僧帽弁に黄色ブドウ球菌が付着していることが判明し、感染性心内膜炎と診断される。
手術を勧められるものの、アトピーとMRSAがひどく手術ができない状態。 僧帽弁に付着している黄色ブドウ球菌が、いつ血液とともに他の臓器に転移しないかが心配。 |
診断 |
問診情報と舌、脈診、ツボなど体の状態から、湿熱が皮膚に蔓延して肌肉が露出しているためにアトピー性皮膚炎となっていて、更に深部の筋肉や心臓の熱の停滞と合わさり深部の心臓の内膜に炎症が発生と考えた。 |
治療 | 1回の治療で1~2個の少数のツボ(後渓、霊台、督兪、脊中、脾兪など)を適宜選んで治療した。 |
治療経過 |
<初診> アトピーと大腸炎の症状緩和と心臓の内膜炎治療を目的に来院。 僧帽弁に付着している黄色ブドウ球菌が他の臓器に転移が心配。
<2診目:12月22日> なんとなく体が楽だった。
<4診目:X+3年2月1日> 体調が悪く来院できなかった。 顔面と頭皮の痒みが非常に強い。
<6診目:X+3年5月22日> ステロイドをやめたら急性腸炎で病院に運ばれた。 頚から上の部分で痒みがきつい。
<8診目:X+3年5月30日> 頭の痒みはましになったが、腰から下肢にかけてジュクジュクしていて、夜中に痒みがきつくなる。
<9診目:X+3年7月17日> 疲労感があるがシャワーを浴びるとましになる。
<15診目:X+3年8月11日> 汗が出ない。 痒みがきつく、生臭い匂いがきつくなってきた。
<17診目:X+3年8月21日> 痒みはややましになってきて、痛みも引く。
<19診目:X+3年9月4日> 臭いがましになってきた。 腹部のジュクジュク感もましになってきた。
<24診目:X+3年10月9日> 治療後はしんどくなく、発熱もない。
<28診目:X+4年3月19日> 1月から手のむくみや腫れがでてきた。 3月に入ってから腹部と上半身の痒みがひどくなってきた。
<36診目:X+4年5月7日> 治療後には痒みがましになり、体臭もましになってきた。 疲労感もましになってきた。
<39診目:X+4年5月28日> 目の周囲の痒みがきつい。 便の臭いもきになる。
<43診目:X+4年6月25日> 変化なし。 クリニックの治療も続けていたが、鍼灸のみの方が効果があるように感じる。
<46診目:X+4年12月24日> 心臓の検査結果に変化はなかった。 立ちくらみや体の倦怠感がある。
<51診目:X+6年1月8日> 心臓の状態は変化なし。悪くもなっていない。 頭部に脱毛があり、痒みもきつい。 気温の変化で痒みがきつくなる。
<58診目:X+7年12月6日> 6月ごろから被害妄想が激しくなり、11月には幻聴が聞こえ、統合失調症と診断された。
<61診目:X+8年1月17日> 顔の痒みはきつくなくなってきた。 病院から処方された薬を飲まなければ幻聴がある。
<63診目:X+8年2月7日> 息苦しそうになり胸を押さえたくなる。 幻聴はあまりなくなってきた。
<65診目:X+8年 |
現在の状態 | 現在までに120診以上受診し、痒みは比較的軽快している。ただ、統合失調症の中でも被害妄想的な態度については、あまり変化がない。幻聴もやや落ち着いたが続いている。息苦しいなど心臓の症状は、ほとんど出ていない。 |
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